ふと気がつくと、ブログの更新をしていなかった。というか、出来なかった。
年度末、年度始めであれこれが重なり、けっこうバタバタしているこの頃。
めずらしく、外からの原稿の依頼を受けたり(日本キリスト教団出版局の定期刊行物『信徒の友 6月号』の連載・「神に呼ばれて」を書きました)、教会の一年の振り返り資料と新年度の計画を考えたり、北海教区総会の準備委員会の資料作り、新年度の稚内北星学園大学講義のシラバス再検討など、駆け足だった。
左手首の骨折で入院している妻との今朝のメールのやり取りでは、「今週は、何だか一週間がながく感じる」と打った。
たぶん、それが本心かなと思う。
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さてさて妻が骨折してしまった。
手首にチタンの穴付きプレートを埋め込み、ビス留めする手術を受けた。
さすがに、手術室で意識があるままでは、「あっ、やばい」「ダメダなあぁ」なんて声が聞こえてしまうと大変なことになるからか、全身麻酔で2時間程眠らされての手術だった。
無事終了とは言え、あれこれ気になる。
看護師をしている方から、【手首の骨折、太い神経が走っているところなので、痛みは想像を絶するものと察します。一日も早い回復と、後遺症が残らないことを祈ります。】とお見舞いメールを頂いて、ありゃま、大変だなのと改めて気になる。手首を使わない生活は考えられないので、本人が一番心配だろう。
たぶん精神的にもダメージを受け、次の冬や雪の季節、怖じ気づく気持ちになるのが自然だろうと思う。折れたのは骨だけではない。
「北海道嫌いにならないでね」と道北の牧師仲間からの声がけもあった。
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実は妻の事故絡みで、トラウマを抱えることになった、一人の方の存在が、とても気になる。
それがタイトルの【お豆腐屋さん】だ。
不定期のようだが、この地域、お豆腐屋さんが車でときどき販売に来てくれる。かなり大型の油揚げなど(20センチ四方?)とても評判のようで、見ていると妻は何枚か購入しては冷凍しているようだ。
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4月5日(土)の午後1時過ぎ、そのお豆腐屋さんの笛の音が、スピーカーから牧師館に居た妻の耳に聞こえたらしい。
やや難聴があるわたしは気づかなかったが、慌ててお財布を手にした妻が、「おじさーん、待ってー」と駆けだした。
牧師館のおもての小道。
二日間続いた春の地吹雪の後、稚内市の除雪車がやって来た後で、圧雪路になっていたことを、わたしも後で知った。
それはそれは、史上最強かと思う程、猛烈なツルンつるんで、これじゃ誰だって転ぶ、と思った。
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しばらくして、なにやら玄関から聞こえて来たのは、「ただいま」の妻の声ではなかつた。
聞き慣れないくもった感じの「ご主人居られますかぁーっ!」の叫び声。
なんじゃ、と思いながら出て行くと、お豆腐屋さんが立っている。
「お、お、奥さんが・・・・」との声で慌てて飛び出すと、わたしもステーンとなりそうな具合だった。
見ると、妻が圧雪路に倒れていた。
その倒れ方は、痛くて苦しんでいるとかではない。銃で撃たれて身動きしないかのような、気絶しているというか、あれ、やばいのかと感じたような姿だった。
然るに、わたしは「どこが痛い?」と聞いたのではなく、生きているのかと体を揺すったような状態だった。
【ボキッ】と折れたときの痛みは相当なものだったようだ。
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お豆腐屋さんには、その後、ひと言電話を入れた。
この地域で長い間、こうして、販売してくださっているお豆腐屋さんだと思う。
お豆腐、油揚、がんもどき、豆乳。
買い物に出て行くことが大変なご高齢の方など、冬場は特に頼りにし、楽しみに待っているのではなかろうか。
だとすると、間違いなくお優しいお人柄に見えたおじさん。
常連の方たちに「急いで出てこないようにね・・・・・危ないから」と、心の内に抱きながらお過ごしであろうかと思う。たぶん、いつも気になるのではと思う。走ってこないでね、と。
そんなお豆腐屋さんのことを想うと、かなり心苦しい。
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妻が世話になっている6人部屋の整形外科の病室。
親しくなるに連れ、ご一緒している方たちのご事情がわかって来たようだった。
お一人は、お葬式のためにはるばる富山から来られて転倒して入院。もう一人、向かいのやさしいおばあちゃんは、利尻島からドクターヘリを使って運び込まれてきたというではないか。
妻とも数日前に、「まだ、稚内市でよかったよな。これが離島とか僻地で病院がなかったら・・・」と話していたら、やはり、そういうことになるのだった。
春が来たな、と思っていたら、さいごに落とし穴。妻も辛かろうと思う。
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久しぶりに米を研いで、我ら自慢のこんぶ水で炊いてみたが、今ひとつ上手に炊けない。いやはや、困ったものだ。
きのうは、夜の祈祷会が終わり、そら夕食だということで、牛丼チェーンの「すき家」に車で直行。一人テーブルに座った。
牛丼中盛りと、味噌汁、お新香、生卵のセットを食べ終わり、「チョコムースとコーヒー」を頼もうかなと思った時に、後ろから何やら若者たちの声。
振り向くと、稚内北星学園大学の「キリスト教概論」を受講している男子学生さんと目が合ってしまった。
「今晩は!」と互いが笑顔で声を掛け合った。
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が、その後、わたしの頭の中は妄想も駆け巡った。
「キリ概のもり先生、結婚してねぇのかな」
「結構さみしい暮らし、してんだなぁ」
「いや、あの、あの、あの・・・・」
と心の中でつぶやいたり。
「ここでデザートのチョコムースと有機栽培珈琲にイッチャウと、目立つかなぁ」とかである。結局食べられなかった(シクシク)
ま、そんな暮らしが、しばらく続きそうでござる。やれやれ。
あ、お祈りお励まし、ほんとうに感謝です。end