2014年1月21日(火)№110 『 我 ステテコを愛す 』

 

Wikipedia・ウィキペディアで、「すててこ・ステテコ」について調べると、冒頭の何行かにこう記している。

 

【ステテコ(suteteko)とは主に男子が着用する、裾が股より長く膝下丈まであるズボン下である。猿股や股引とは違い、幅広で肌に密着しない。パンツの外、ズボンの内に穿く。汗を吸着したり滑りをよくしたりする役目もあり、ズボンを傷めにくくする効果があるほか防寒効果もある。】

 

何を隠そうというか、隠せないのだが、わたしはステテコが大好きだ。ステテコの原点はオヤジであり、祖父であり、親戚のおじさんだ。

 

ただ、30歳に少し年を重ねたばかりのあの日までは、まさか、自分がステテコを愛するようになるなんて、思いもしなかったし、正直言えば、馬鹿にしていたのだった。ダンディーにスーツを着こなすのに、ステテコなんて馬鹿らしいと信じて居た。

 

ハンフリー・ボガートだって、アランドロンだってステテコなんて無縁だろう。現代の人気映画スターの、ジョニー・デップ、トム・クルーズ、ブラッド・ピットだってそうだろう。

 

日本の人気俳優・役所広司あたりだとどうかと言えば、ヤツはもしや愛好者か。しかし、二宮和也、向井理あたりだと、どうも自信が無い。渡哲也とか石原裕次郎はどうだろう。

 

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あの日。

 

それは、神学校4年生の夏。参議院選挙が行われたあの日曜日の夜のことだ。静岡県沼津市にある教会の牧師が、最終学年の4年生のクラス担任をされていたO先生だった。

 

O先生のご配慮により、沼津近郊の教会の日曜日の礼拝説教を、わたしたち同期生は担当させて頂いたのだった。同期生と言っても、本当に寺子屋のような神学校。一緒に卒業したのは6名だけだった。

 

その日、各教会での奉仕を終えてから、夕礼拝は一番年下のTの説教で共に礼拝を守り、その後は、O先生とE子さんの心尽くしの沼津のおいしい刺身を前に手巻き寿司を楽しみ、参院選挙の結果を眺めながら、夜は更けていった。

 

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さぁ、そろそろ、教会の畳の部屋でごろ寝して休もうぜ、という段になり、私の眼から鱗が落ちる瞬間がやって来た。

 

貧乏な神学生の中で、ひときわダンディーなスーツを着こなす同級生のNが居た。神学校で学ぶ同級生の年齢は、父親のような人も居たし、弟分のような男も居たのだが、Nは多分同じ歳だったと思う。

 

スーツのズボンを脱ぎだしたNを見守っていたわたしは、Nがステテコを履いているのに気が付いて何か言ったのだと思う。

 

「お前、ステテコなんてはいているのか?」

みたいな事だと思う。もう完全に忘れているが。

 

するとNは答えた。

 

「もり、お前知らないのか。ステテコは汗を吸ってスーツを傷めないように生地を守ってくれるんだぞ」

と。

 

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オーバーに言えば青天の霹靂、いや、目から鱗だった。

 

うちのオヤジや祖父が、パンツ一丁でぶらぶら歩くのはやめて、と言われてはいていると思い込んでいたステテコ。それが、ダンディーに生きる男の必須アイテムだとは知らなかった。

 

おそらく何日もしないうちに、わたしはスーパーに走り、「す、す、ステテコください」と言っていたと思う。以来、20年と少し。

 

今では、夏も冬も春も秋も、ステテコさまは、わが人生の友なのだ。下手なパジャマなんて必要ない。jeansだってステテコを履いた方がいい。トレパンをと言うときはさすがによすが、ホントに、Nには感謝だ。

 

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昨夕のこと。そのNが逝った。天に帰って逝った。

 

偶然、関東在住の同窓生に、昆布バザーの代金の入金御礼の電話を入れた時、「もり先生、知っていますか・・・・亡くなられたんです」と聴いたのだった。

 

同級生は二人目の召天。Hは召されてから何年が経つだろう。彼もわたしと同じ歳だった。

 

ここ数年、Nは教会の現場を離れていた。そして、高齢者福祉関連の仕事に仕え始めて頑張っていたそうだ。

 

ひと言、ふたことでは説明がつかない事情があったとことは推測できる。人一倍繊細な男だから、傷つき疲れ果てたのだと思う。

 

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神学校で説教の作り方のイロハを学び始めた時に、黙想というものが必要だと、当時の校長から教えて頂いた。

 

黙想。それは神学生がそう簡単にできることではなかった。

 

ある日の説教演習の授業だったと思うが、Nは正直に校長にこう言ってくれた。

 

「先生、榎本保郎の『一日一章』を読んで考えることくらいしか俺たちには出来ないっすよ」

と。

 

その時俺は黙っていたけれど、本当のところ、俺も殆ど同じようなことを考えていたぞ。

 

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牧師で有り続けるということは、喜ばしいことも多く経験するけれど、同時に、なんと大変なことかと思う。

 

特に、同じ歳の同級生を二人、53歳というこの歳で既に天に送ってしまった者としてあらためて思う。

 

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Nよ。

 

俺はさぁ、一生、ステテコ大事にするからな。ステテコに足を通す度に、お前を思うぞ。本当にさ。

 

だって、ステテコなしの俺なんて考えられないもの。

 

おつかれさま、N。

 

さみしいぞ、N。

 

ありがとう、N。お前はさ、永遠だ、永遠。

 

我、ステテコを愛すだからな。待ってろよ!end

 

 

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