2014年1月17(金)№108 ■教会HPより転載 『 “ お花の十字架 ”と共に 「もーし!」の合言葉 』

Sさんの葬儀が市内のホールで行われました。Sさんは稚内教会の方ではありませんが、クリスチャンのご家族からの相談を受けて、仕えさせていただきました。1月1日に召天。その日は、大正15年生まれの誕生日でもありました。ひつぎの上に置く、十字架がほしいな、と思い準備していただいたものです。
Sさんの葬儀が市内のホールで行われました。Sさんは稚内教会の方ではありませんが、クリスチャンのご家族からの相談を受けて、仕えさせていただきました。1月1日に召天。その日は、大正15年生まれの誕生日でもありました。ひつぎの上に置く、十字架がほしいな、と思い準備していただいたものです。

■ちょっと「request」とわたし自身も思うところがあったので、稚内教会のHPに既に公開しているものですが、転載します。あしからず。

 

写真のお花。1月1日(水)の夕方、88歳のお誕生日に天国へと召されて行った、Sさんの葬儀に際し、わたし(牧師のもりでございます)がお願いして創っていただいた、十字架をモチーフにした美しいお花です。聖書にもつながるユリがアクセントになっていて素敵です。

 

お花屋さん、ありがとうございます。願い通りのものです。

 

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12月28日(土)、Sさんのお嬢さんM子さんが教会に電話を下さいました。「父の葬儀のことを相談したいのですが・・・」と。

 

稚内の学校を卒業されてから30年。2年前にはお母さま、そして、この度はお父さまを天に送られました。都内にお住まいの他教会のご婦人ですが、稚内教会内部での約束にしたがって、ご相談をお受けしました。

 

以来、お父さまが入院中の病床をM子さんと共にお訪ねし「主われを愛す」を歌ったり、お祈りを合わせながら過ごしました。また、ご家族からは、Sさんとの想い出や88年のあゆみについて、ゆっくりお聴きしていました。

 

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葬儀は、市内の葬儀屋さんのホールで行われました。そして、司式させて頂いた者としても、さまざまな恵みにあずからせていただく機会となりました。

 

Sさんは、昭和30年・1955年に、漁師の町と呼ばれることのある稚内の漁業者の方々が使う、底引き網を引き上げる油圧式の機械などを製作する会社をご家族と共に設立。お兄さまの10年程前の召天後は、88歳の誕生日の日まで、社長さんとして頑張り続けて来られた方でした。

 

ご家族を大切にされたことはもちろんのこと、稚内のみならず道内各地の漁業に携わる方たちの求める機械を産み出し、皆さんに頼りにされ、共に歩まれた方であること知りました。

 

【喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい】

 

ローマの信徒への手紙12章15節の聖書の言葉を、告別式の開式のみ言葉としてに選び、朗読しました。

 

まさに、そのような人生を歩まれた方であることを信じて。

 

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シベリア抑留。

 

個人的には、歴史の一ページとして聞いたことがあるだけでした。寒さと過酷な飢え、そして強制労働があったとは聞いていました。

 

実はSさん。シベリア抑留4年を経験した後に、帰国された方だったのです。大正15年生まれということは、召集令状を避けることの出来ないさいごの世代のはずです。昭和元年・4月1日生まれだったわたしの父より、ほんの少し年上。わたしの父は戦地におもむきませんでした。

 

Sさんが「平和」を声高にうったえることはおそらくなかったと思いますが、お嬢さんのM子さんが見守った、Sさん最後の食事の時に、こんな会話があったそうです。

 

「お父さん、おかずと一緒に、ご飯たべなさいよ。どうして、ご飯ばっかり先にたべてしまうの・・・」

 

「父さん、シベリアに居たとき、ご飯は一度もあたらなかったんだ。だから、こういう食べ方に・・・」

 

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【わたしは道であり、真理であり、命である】(ヨハネ福音書14章6節)

 

このみ言葉も読ませて頂きました。

 

「なぜ、自分は生き延びて、帰ってくることが出来たのか」

 

Sさん、そういう言葉を口にすることも、あったそうです。それはまた、多くの仲間たちが生きて帰ることが出来なかったことを意味するものです。

 

与えられたいのちを、生かされている場で誠実に捧げ続けられたSさん。

 

2年前に先に召された奥さまと、二人三脚・一心同体で歩まれたことも大きな力になったことは間違いありません。奥さまの手料理をいつも心から喜び、笑顔で味わっていたそうです。お昼休みも、お宅に食事に帰って来ていたとのこと。

 

が、神さまからの最高の贈り物であった奥さまの存在と同時に、見えざる導きをされた、主イエス・キリストの父なる神さまは、Sさんの生きるべき道を、見えざるみ手をもって、最期の日まで、切り拓いて、備えてくださったことを思ったのです。

 

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葬儀では思いがけない出会いがありました。

 

稚内教会の牧師館の斜め前にお住まいのご夫妻・Yさんが前夜式に出席されていました。後でご遺族に聞いてみると、Sさんのご親戚でした。

 

お近くの方を教会の礼拝にお招きする、というのは難しいことです。でも、葬儀の場で、神さまの愛と導きを語らせて頂く場でご一緒できました。

 

また、前夜式の献花の時に近づいて来た男性の姿にあっと思いました。利尻昆布バザーで本当に多くのことを教えていただき、お世話になっている漁師さんでした。翌日の告別式にもお出でになったSさん。

 

これまた、教会の礼拝に出席して頂くのは、なかなかハードルが高いと思うのです。でも、Sさんの葬儀に仕えさせて頂くことを通じて、キリスト教が証しするたいせつな部分をご一緒していただけたことは、思いも寄らない神さまの備えでした。

 

お話をいつも沢山なさる漁師さんですから、きっと、次に顔を合わせる時に、何かを語り出して下さることと思います。

 

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告別式の時、想い出を語られたのは、お孫さんのI子さんでした。中学1年生の制服を着て出席された女の子です。中学3年と大学一年のお姉さんが居るのですが、I子さんがstandマイクの前に立ってしっかりとお話になりました。

 

I子さん。おじいちゃんとの、電話を掛けるときのヒミツの合言葉を、皆さんに教えてくれました。

 

おじいちゃん電話をするとき、「もし、もし」と言わないのだそうです。

 

「もーし!」

 

その声が、受話器の先から聞こえて来るとSさんは答えます。

 

「おーーーっ、きたなぁ」

 

こう応えて、二人は会話を楽しんでいたそうです。末っ子だからこそ、こういうやり取りが出来たのかも知れないです。

 

クリスチャンの彼女は、「おじいちゃんが、さいごにイエスさまを信じてくれて本当に良かったです」とお話しになり、想い出を語る役目を終えられました。

 

そう、娘さんのM子さんが、「最期の時は、キリスト教でいいね。天国に行こうね」との言葉に、ベッドの上で、深く大きくうなずいたそうです。

 

病室のベッドの傍らに座り、わたしとM子さんが一緒に歌った賛美歌は、間違いなく耳もとで聴かれ、あー、キリスト教の牧師さんが来たのだなぁ、とわかってくださっていたようです。

 

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利尻島出身のSさんです。9人兄弟と知りました。

 

わたしは告別式のさいごにこうお話ししました。

 

Sさんは神さまが天国へと召し上げて行かれたのは確かです。

 

でも、今、漁港のある町・稚内から、船出されたのです。ふるさとの島(利尻)へ向けての船出のように見えます。

 

しかし、利尻島の脇を通り過ぎ、遙か彼方に、奥さまもご両親も手を振って待って居られる場所があります。今ここは、彼方にある港に向けての船出の場であり、その時だと思うのです。祈りを持って見送りましょう、と。

 

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この度の葬儀を通じて、素晴らし出会いを与えられました。わたしは地域にある教会の牧師として、ほんとうに幸せ者だと感じました。

 

イエスさまは言われました。

 

【行って あなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える】(ヨハネ福音書14章3節)

 

ご遺族の上に、また、ご一緒にお仕事をして来られた、会社の皆さんや地域の皆さまに、主イエス・キリストによる慰めをお祈りいたします。

 

そして、Sさん、最期の5日間の出会いを心から感謝いたします。天国でお話、聴かせてください。end

 

※2014年1月10(金)№105 『 神さまの振るタクトのもとで 』 という題で、Sさんの葬儀のこと記しています。お時間があれば、どうぞお立ち寄り下さい。

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