2013年11月28(木)№94 『 増補改訂版 牧師室便り No.20 』(11/24発行分)

◎余計なことながら、だらだらとした文です。体調のすぐれない方やお急ぎの方は、いずれまたの方がよろしいかと思います。ではよろしく。

 

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冬の到来を告げた雪がいったん解け始めた11月12日(火)。稚内から歌登の匹田家での家庭集会に向かった。

 

いつもは少しでも時間を稼ぎたくて、稚内から猿払には山道を抜けるのだが、前日までの雪の影響を恐れて、海沿いの国道を選んだ。

 

宗谷岬を超えるルートだ。当日は、オホーツク海沿いを走っているとサハリンがクッキリと見える日だった。

 

しかし、稚内から猿払を抜けるあたりのカーブで、車が完全にひっくり返ってお腹を出して路肩に転がっている車を脇に見るなど、「」やー、気をつけないと大変なことになるなぁ」等と思っていたのだった。帰り道、気をつけないととずっと思っていたはずだった。

 

その気持ちは失わないまま、家庭集会を終え、130㎞の道を帰る準備をしながら、匹田さん、開地さんに「次は来春にんまるかなぁ? とにかく、安全第一に帰りますよ。3月にはまた神学生が来ますので、その時には必ず・・・」。

 

「ブラックアイスバーンに気をつけて」という言葉を聞きながら稚内に向かって出発した。

 

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午後6時頃、帆立貝で知られる猿払当たりの雪をくぐって、ほっとしながら宗谷岬を抜けた頃のこと。

 

制限速度40㎞位で走っていた車が、気が付いたときには、反対車線にスーッと流れ始めていた。「あーーっ」と思った時にはハンドルもブレーキも効かない。クルクルとハンドルを回しているうちに、車体の右側後方を海側のガードレールにぶつけながら体制を整え元の車線に戻った。

 

後で考えると、ガードレールがない場所もあるので、海に落ちるのを防ぐためのレールだったということだろう。助かった。

 

役員さんの一人に電話入れたり、駐在さんの事故検分を終え、「警察からの処罰はありません。北海道の開発部からガード修理のことで電話があるはずです」の声を聞き、牧師館に戻った。

 

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翌日、冷静になってから思ったのだった。

 

対向車が来なくて助かったんだなぁと。命を落とす所だった。いや、大怪我をして入院ということもあり得た。一生残る後遺症とか、罪の無い方を巻き込んでの大変な事故となってもおかしくなかった。

 

神さまが助けてくださった、ということだろう。

 

雪が降り積もって圧雪路になる前の道の危なさや、海沿いの道路やトンネル付近、あるいは、交差点の朝晩の凍結についての情報は頭に入ってはいた。が、こういうことは、経験してみなければやはりわからないと悟った。

 

とにかく、怖ろしさが身に浸みた。以前から、牧師館前の小さなな坂道を、四駆で上れない、あるいは、滑ってブレーキが全く効かなくて止まらないを経験していた妻は、「わたしはもう、冬の間は絶対に車に乗らんけん!」と再度宣言した。

 

北海道の道。4WDだろうが何だろうが関係ない。ダメなときはダメ。お世話になっている自動車屋さんに車を持ち込んだら、同じ日に、わたしよりも大破した車が2台。さらに、これからもう一台運ばれて来ます、とフロントの方が言っていた。そういうことなのである。

 

以上、反省と共にご報告いたします。修理などは保険の登級を落とすだけで済んたことでも、ホッとしている次第だ。

 

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そういえば、嬉しい変化が歌登の匹田家の集会であった。

 

到着すると、本当は久しぶりにお目に掛かるのに「森先生とは、いつも会ってる気がする」と芳子さん。「〈あれ〉で見るもんなぁ」と御主人。開地さんもうなずく。

 

そう、インターネットを利用出来る環境にある匹田さんと開地さん。教会には来れなくても、礼拝のライブ配信や録画での礼拝参加が可能になり、しばしばご覧になっているのだった。

 

礼拝中継で“出番"が長いのは牧師だ。なので、いつも顔は見ておられるというわけだ。風邪気味だったので、おとといの声の違いに直ぐに気が付かれた。

 

歌登の方たちは、酪農家である。

 

皆さんのいつもの仕事の流れからすると、どうしても早朝から10時過ぎまでが午前の部。それから午後4時前から午後の部の仕事となるのだ。

 

酪農家のお仕事には平日も日曜日もない。年中無休で働き続ける。それゆえ、礼拝出席は、教会までノンストップで2時間半掛かることを考えると無理に等しいわけだ。

それだからこそ、インターネットの配信は画期的だ。小さいけれども、確かな福音の分かち合いの機会となっている。共に恵みに与れる場が生まれ、それを確認出来ることを素直に喜びたい。

 

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ところで、以前から時々記していることだが、月に一度、『稚内市報』が届くと【稚内市の人口】の欄に目が行く。最近は切り抜きをスクラップするようになってきた。

9月末の稚内市の人口統計。前月比で男女合わせて〈-67人〉。さらに、世帯数で〈-47世帯〉とある。

 

現在37,059人の町から確実に人口流出が続いていることが淡々と告げられ続けている。

 

一体、誰が、どこへ、何を理由に一家を挙げて引っ越していくのか。仕事、学業、高齢、病気などが考えられる。

 

北海教区の札幌在住のある先輩の調査に依れば、今後人口増が望めるのは、道内では札幌市だけというのは明白らしい。

 

稚内教会の教勢のみならず、右肩上がりの成長は道内ではあり得ない。その難しい現実がこの町にももちろんあるわけだ。

 

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だからといって、嘆いてばかりいてもつまらないし、意味はないだろう。

 

さればこそ、小さな教会・小さな町だからこその〈豊かさ〉に自信を持てる共通の価値観を見いだしてゆくことが大切なのだな、と最近あらためて思う。

 

小さい交わりの恵みをわたしは最近とみに感じることが多い。稚内に慣れて来たからだろうか。狭すぎる、小さすぎることもあるのかも知れない。

 

けれども、人と人とが本当の意味で出会えない交わりよりも、大切な小ささというものが存在するのではないか。

 

かつてわたしは、多くの園児がいる幼稚園の責任を与えられていた頃があった。しかし、各ご家庭のこととか、園児一人ひとりのことについて丁寧に心配りできたか、園児の名前を顔が一致したのかと言えば、170人と110人の園児のことを覚えられるわけがなかった。

 

しっかりと頭と心に刻まれたのは、余程のトラブルが発生したときに限られていたのが実状だった。

 

親友と言える友が、大分県のある地域で夫婦二人で小学校の教師をしている。断片的な言葉だけれど、彼らは小さな学校の楽しさを口にしていたことを思い出す。

 

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〈利尻昆布バザー〉のことも少しふれておこう。今年の春先には全く想像出来なかったのが〈利尻こんぶバザー〉である。しかしこのバザーの交わりが全国各地の教会や個人の方たちとゆるやかに与えられ始めていることは、神さまからの〈贈り物〉としか言いようがない。

 

かつての仲間たちとの交流が新しく生まれたり、稚内という町や教会のことが知られているのが様々な形でわかる。

 

名古屋のある教会のバザーでお買い上げ頂いた品物を、川崎市在住のクリスチャンのご婦人が手にし、その話を聞いた身近な方が、「わたしも欲しいというので」と電話が入ってくるようになった。

 

こちらのことは、ご存知『こんぶ通信』等で、知って頂いている分、明らかに初めましての思いを越えて、親しげにお話し下さるから不思議な気持ちになる。

 

こんぶちゃん、あなたは本当に素晴らしい。いやいや、これは【神わざ】なのだとわかって来た。人の思いだけではこうは決してならない。

 

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秋から冬に季節は動いたのだが、夏の前後、旅人が稚内教会を幾人か訪れて下さった。しかし、地元に根付いて暮らして居る方を新来会者として礼拝に迎えることが難しいのは事実だ。

 

教会への来会者の数は正直言って気になる。

 

でも、旅行者や遠くにお住まいの方たちにとっての励ましとなる〈灯台〉のような役割が稚内教会には与えられていることがハッキリとしてきた。

 

「北へ」。

 

それは憧れか、ロマンなのかも知れない。多くの方が訪れてみたいと思って下さるのだから。そして、とりわけクリスチャンの方たちに対しては、教派を超えて「最北の小さな町にある稚内教会が、しっかりがんばっている」という姿にふれて頂いて、元気が伝わって行くのならば、幸せなことではないかと思う。

 

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「子ども祝福礼拝」が11月17日におこなわれた。礼拝堂には30名近いお子さんたちと共に、健やかな成長を願うお父さんお母さんの顔も見えた。

 

子どもたちへのメッセージと祝福を終えた後、保護者の方たちは説教もシッカリと聴いて下さっていた。わかりやすい話を心掛けてみた。

 

翌日、祝福の直前にお名前を呼ぶと、手を挙げて「ハーイ」とお返事してくれた〈ぶんた君・2歳?〉のお母さまNさんが「きのうは楽しかったです、ありがとうございました」と玄関前に立ち止まり笑顔でお話下さった。

 

わたしも楽しかったから自然と笑顔になる。これは、お互い心底そう思っていたことだと確信がある。

 

その後、保育園の園長先生からも、幾人かの方たちから、「ありがとうございました」の声が届いているというお話も伺った。どんな形で実を結ぶ日が来るのか。それはわからない。

 

成長させてくださるのは神。そう信じて委ねたい。

 

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「利尻昆布バザー」と言えば我が家でのヒットした美味しい味わい方を一つご報告。それはカレーだ。

 

当初、「カレーうどん」をということで、妻が、小麦粉とカレー粉からのいつものスープを作り始めたところ、「こんぶ水(すい)」の作り置きを水の代わりなのか、カレーに入れたところ、たまげるほど味がまろやかになっていた。

 

もしや、うどんよりも、ラーメンの方が旨いのではという判断で、カレーラーメンとなって食卓にのぼったのだが、これは本当においしかった。あの美味しさは病みつきなる。ぜったいにお勧めできる。

 

味の革命だとすら思う。すごいぞ、利尻昆布の「こんぶ水」!

 

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このブログでは、既にご報告の通り、遅い夏休みというのか、休暇を頂き、10月末に網走の小さな森の中のお宅でひと息つくことができた。

 

お世話になったのは、妻の友人夫妻の家。一度も会ったことがなかったのに、遠慮の“え"の字もなく、お言葉に甘えて二泊させて頂いた。

 

幾つもの驚きと喜びを経験したけれど、チェロとバイオリンの伴奏で讃美歌を歌うという、夢のような幸せにあずかった。ご夫妻も讃美歌の伴奏?をすることを楽しんでくださったのだから、これもまた良かったと思う。

 

「暗くなる前に、ぜんぶ、ほっぽりだして、風呂に行こう!」。そうご夫妻に割れて、逞しく見える四駆に乗せられて、地元の方だけが行くような温泉を楽しむ贅沢も味わった。

 

癒されたなぁ、と思う。道東の景色は、道北とはかなり違った。いや宗谷と違うと言うべきか。野菜畑が広がる景色は稚内には基本的にはないのである。目の前に広がる丘、トラクターの種類が違うのだ。

 

オホーツク海の豊かさや、知床連山の美しさにも初めて触れ、「うつくしいのは、利尻だけじゃないのだなぁ」と遅ればせながら知った次第だ。

 

長年北海道に暮らして居ても、稚内には来たことがない、という方も大勢居られることを知っているのだが、北海道は広いなぁと改めて思った。

 

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今の稚内教会。

 

治療がとても難しいご病気と闘って居られる方がとても多い。いのちに関わるご病気との闘いの日々を過ごしておられるご家族が多い。

 

牧会の現場に仕える者として、最近は、30年近く前、わたし自身の病との兼ね合いで死を恐れ、死について悩んでいた頃に訪ねていったある先生の言葉を思い出す。

 

それは、上智大学のアルフォンス・デーケン神父様が「生と死を考えるセミナー」で教えて下さった「にも関わらずユーモアを!」という意味の言葉であり生き方だ。

 

ベッドの上で洗礼を受けたわたし。キリスト者、そして、伝道者としての原点は病床や病院、そしてその周囲にあるのだ。いろんな形で、その地点に引き戻されることを思う。

 

これもまた神さまのご計画。そのことを信じて疑わない今を歩んでいる。end

 

 

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