~わっかない教会~ こんぶ通信 NO.2
2013年9月 創刊号
日本キリスト教団 稚内教会 こんぶ委員会
〒 097-0004 北海道稚内市緑 4-5-32
牧師 : 森 言一郎
『 こんぶ 我らを 結ぶ!』
牧師館の電話台の上に一枚の細長く黒い物が置いてありました。それ、ある方から頂いた本の栞(しおり)でした。ところが、我が家では夫婦二人して同じことを思っていたのです。「なんでこんな所に〈こんぶ〉があるの!」と。
栞(しおり)がこんぶに見えてしまう日常。日本初の〈こんぶ牧師〉となりました森でございます。
あっ、まだ「はじめまして」ですか?『こんぶ通信1号』もございます。未読の方には直ぐにお送りしますので、ぜひ、ご一読下さいませ。稚内教会が“こんぶバザー”を始めた経緯(いきさつ)など、記しております。
わたくし。かつて新潟県上越市にある教会に仕えておりました。その頃、定期的に一緒に勉強会を続けていた牧師のT先生という方が居られました。
彼は新潟県でも有数の豪雪地帯の真ん真ん中。栃尾教会の牧師です。T牧師は物静かですが熱い心を持つ男。ある時にぽつりと口にした言葉があります。「わたし、牧師になって、まさか除雪のためにブルドーザーを運転するようになるとは思いもしませんでしたよ」と。
その瞬間、聖書から飛び出してきていた悪魔(サタン)がわたしの心の中で囁(ささや)きました。「うちも雪多いけど、ブルまでは……。気の毒になぁ」と。
過日、和気あいあい、稚内教会の皆さんとこんぶ切りの作業をしておりました。わたくし、ごくごく自然につぶやきました。「まさか、牧師になって、こんぶを切るようになるなんて思いもしませんでした」と。
すると、笑顔あふれるヒマワリのようなご婦人が言われました。「森先生、そのうち稚内教会は、ホッケを干し始めるかも知れないですよ」。一同、大爆笑。わたしは静かにT牧師を思いました。世の中、何が起こるか分かりません。いえいえ「神のなさるわざは、皆その時にかなって美しい」のです。ちなみに、ホッケは稚内のもう一つの誇りです。
昆布バザーを始めた稚内教会。経済的な体力も、こんぶバザーの作業に取り組む肉体的な体力も、実に小さいものです。
始めてみて分かりましたが、わたしたちがこんぶの作業に集中して関われるのは正味1時間半程。それを超えると、途端に誤作動が始まります(笑)。シールを逆さに貼る、賞味期限を書き間違える、内容量を間違えてしまう等など。もしも2時間以上作業を続けると、次に教会に行く日は、朝から気が重くなるはずです。
でも、わたしたちを支えてくれる各地の皆さまの温かいお心が、じわーっと伝わってくるのです。
「役員会で相談して、利尻こんぶバザーコーナーを設けました」「自分のお店=美容室で販売しますので、領収書20枚と一緒に送って下さい」「バザーや婦人会で呼び掛けますから」「これで利益あるの、大丈夫?」「本当においしいねぇ」等々。いやー、実に〈かたじけない〉ことでございます。
今まで、見も知らなかったかも知れぬ最北の町にある稚内教会を覚え、祈りをもって全国の皆さんが連絡を下さる。こんな交わりが与えられるとは。
涙。電話に出ますと「あー、こんぶの森センセイですか?」言われることもあります。
8月下旬。少し心配なことが起こりました。こんぶは海のものですから、魚と同じように、大漁・不漁があり時価が付きます。地元新聞に今季のこんぶ初入札の結果が報道されていました。
今季は昨年比10分の1の大不漁と言われ、専門の商社は高値で入札したようです。それゆえ、わたしたちが扱うこんぶも昨年と比べ70%も値上がりしました。お世話になっている漁師さん。心配して下さり言われました。
「あんたらぁ、だいじょうぶかい。こんぶ、買えるのかい」と。
さすがに500円で販売を続けるためには、内容量の調整をせざるを得ません。心苦しいのですが、どうかよろしくお願いいたします。
やがて多少の利益が生じるようになりましたら、昨年の秋、牧師館の補修工事の時に資金が不足し発行した、【教会債返済 110万円】に用いさせて頂くことになりました。
むだになる所が一切ない、と言われるのが利尻こんぶです。実はそのことを、こんぶバザーの取り組みでも感じています。こんぶの持つ力は実に奥深く、小さな教会に笑顔が与えられています、神さまからの賜物は、現代のふしぎな福音物語の序章に導いてくれたのです。(続く)