稚内北星学園大学のキリスト教概論の講義。水曜日の一限目に担当させていただいている。今期は20名弱が登録。一限目で、早起きはつらいからか、きょうは10名程の出席。もう、飽きてしまったかな。
ただ、これくらいの人数の方が、教える側としては、向き合うのにちょうどよい、というのも本当のところだ。
キリスト教とか聖書に対して、もともと積極的な関心や興味をもっておられるわけではない方たちに対しての講義。
これはやり甲斐がある。とても楽しい時間だ。彼らに真実な何かを伝えられることが出来るか否か。
見方を変えれば、これは一種の“路傍伝道"の修行の場かも知れない。
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きょうは6回目にして、ようやくイエスの誕生をめぐる所にたどり着いた。学生さんたちも、教科書指定した新約聖書をおおむね手元に置いてくださった。
いよいよ聖書の開き方を伝え、「(新)100」というのは、新約の100㌻という意味ですよとか、大きな数字は【章】、小さな数字は【節】ということなども言葉にする。
新約の冒頭。マタイによる福音書1章の系図の意味などを語り、ルカによる福音書1章のマリアの受胎告知の場面を読んで、すこし解説した。
その後、“フラ アンジェリコ"や“レオナルド ダ ビンチ"(彼らいずれも1400年代の人)の受胎告知の良く知られている美しい絵画のカラーコピーを配布。
羽根が付いている人物=天使について語ったり、マリアが青い服を着て描かれることが多いのがこういった絵画の伝統だよ、等とお話した。
「○○さん、あなたの背中に羽根が生えていない?」「羽根の代わりに、シッポがついてるかもよ」等と軽い言葉を交わしながら授業は進んだ。
なぜ、キリスト教の歴史の中で絵画が広く用いられるようになったのか・・・。絵の作者は単に絵を描きたいからそうしたのか。そんなこともいっしょに考えたりもした。そして、グーテンベルクの活版印刷技術(やはり1450年頃活版印刷技術完成)との兼ね合いなどにも触れた。要するに、聖書に関係する絵画は、当時の聖書そのもの、あるいはそれ以上の役割を果たしていたのだ。
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その後、以前から配布していた、受胎告知の場面の賛美歌のプリントから1曲を選んで、ヒムプレーヤー(賛美歌自動伴奏機)で紹介することにした。
この日、紹介したのは、讃美歌21-190の『ヨセフのいいなずけ』だった。
『きよしこの夜』や『アメージンググレイス』ならば、どこかで聞いてメロディーとして彼らの耳にも入るだろう。しかしこの曲は、教会の中でもまだまだ歌ったことがない人がたくさん居られる曲のひとつ。いわゆる現代の賛美歌で、おそらく、Hymn Explosion(さんびか 爆発)の中の一曲。
もともと、讃美歌を歌う習慣などない学生さんたちと「せーのー さん ハイ」で歌う予定は無かったので、1節だけメロディーを流して聴いてもらった後に、わたしはひとり歌いだした。
1 ヨセフのいいなずけ マリアのもと・・・
2 めぐまれた女性よ 喜びなさい・・・
3 マリアはそれを聞いて 不思議に思う・・・
4 あなたには子どもが 生まれるでしょう・・・
5 どうしてそんなこと ありえるでしょう・・・
6 マリアはそれを聞いて 答えました・・・
結局、全部歌ってしまった。所々、完全に楽譜から音は外れていた。マズイ歌を聞かせてしまったものだ。また、シマッタ(∋_∈)が起きたかなぁ、と思いつつ、先に進んだのだった。
8時50分から90分の講義。最後の10分間は、その日の講義の感想や質問、気付きを、ちいさな大学指定の試験用紙のような紙切れに記入していただいている。
この日も、じゃあ最後に、記してくださーい、と伝えて、授業は終了した。
授業後、飲み物の自動販売機が置かれているホールの長いすに座って、何かで喉をうるおしながらクールダウンするのがわたしの一つのパターン。そしてそこで、提出していただいたものを眺めるのだった。
きょうの出席者11名のうちで、3人の方が讃美歌に関連して応答してくれていた。
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○Aさん 女性
朝から讃美歌を聴くと すがすがしい 気持ちになれた。
ぜひ 他の歌も 聴いてみたいと思った・・・・・・・・。
○Mさん 女性
マリアがどんな人なのか気になります。うちの家系図にも名前がなく、~の娘 と書かれていることがあるので、きっと、マリアもそんな感じだと思います。もっと他の聖歌? 賛美歌も聴きたいです・・・・・・。
○Yさん 男性
今日はヨセフのいいなずけを聴いたが これまで いくつかの賛歌を聴いてきた。そこで思ったのが 絵は人々に伝えるために描かれた。
では 歌は なぜあるのか?
「わかりやすくするため」という理由だけなのか。まだ他にも理由があるように思う・・・・・・・
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少し驚きだった。もちろん、わたしの歌声を聴いて、引いてしまった方も居られると予想した方が良いかも知れないのではあるが・・・・ でも、嬉しかった。
3階から降りて、2階の図書館に立ち寄る。これもまた、よくあるパターン。
図書館員のHさんは、図書の情報だけではなく、学生さん達との向き合い方とか、現代学生気質みたいなことをいつもおしゃべりしている方だ。Hさんに三名の反応を手短に伝えた。
するとHさん「もり先生、どんどん歌ってください。紹介してください。マタイ受難曲のCDならここにもありますから」と言ってくださったりもした。
なーるほどねぇ。
これまで美しい聖書の場面にちなんだ絵画を紹介しつつ、イエスを指し示そうとしてはいたけれども・・・。これからは、もっと、賛美歌や宗教曲を通じて、今どきの学生さん達に向き合うことも、ひとつの大切な道なのかも知れない。
いやいや、キリスト教の世界や教会では、昔からよく言われていることがある。聖書の言葉なんかよりも、賛美歌が好きだから教会に来たのです という方が幾人も居られると・・・・。
これはまた、たいせつな事実なのであり、ひとつの扉を示してくれているに違いないと思う。「いざ進め」との声きこゆ。end